新刊紹介 | 編著、翻訳など | 『退屈 息もつかせぬその歴史』 |
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ピーター・トゥーヒー
『退屈 息もつかせぬその歴史』
篠儀直子(訳)
退屈を論ずべく、文学や哲学、更には絵画などの芸術作品が縦横無尽に取り上げられる。どれも大変魅力的だが、現代の退屈論として注目するべきは脳神経科学的視点であろう。「MRI」という単語が何度も出てくる。そして、究極的なのは、要するに退屈というのはドーパミンの不足に過ぎないという論点だ(p.51)。そこからは多動性障害の子どもたちの行動もまたドーパミン・レベルの低さによって説明される(ドーパミン・レベルの低さ故に子どもたちは容易に退屈する。そのため彼らは新しいことを探し、危険を冒す)。さて脳神経科学の進歩によってこれまでの退屈論は書き換えられてしまうことになるだろうか? そんなことはないだろう。「退屈とどう向き合う」という問題が、「ドーパミン・レベルの低さとどう向き合うか」と言い換えられたに過ぎないからだ。
巻末の参考文献紹介がすばらしい。退屈について考えたい人には必読の参考書。(國分功一郎)
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