新刊紹介 編著、翻訳など 『西洋文学――理解と鑑賞――』

『西洋文学――理解と鑑賞――』
片渕悦久(分担執筆)、森岡裕一(編著)
大阪大学出版会、2011年10月

大阪大学共通教育シリーズの一冊として企画刊行された本書は、大阪大学大学院文学研究科の教授、准教授9名(英米文学、フランス文学、ドイツ文学、比較文学の各専門分野に所属)が担当する教養科目「西洋の文学」のために分担執筆した教科書兼西洋文学の案内書である。本書は二部構成となっており、第1部は「講義」と題され、シンボルとアレゴリー、教養小説、意識の流れ、異化と表現主義、オリエンタリズム、メタフィクションなど西洋文学の理解に重要だと思われる14のキーワードを設定し、それらを柱として英米独仏を中心とした古今さまざまな作品の紹介を絡めながら西洋文学のエッセンスを解題していく。第2部は「名作味読セミナー」と題され、『赤と黒』、『ガリヴァー旅行記』、『ブッデンブローク家の人びと』、『白鯨』といった西洋文学を代表する名作の本質的な面白さに迫った、リラックスして味わい深い語り口の講義風読み物となっている。ギリシャ・ローマの古典文学から、英米独仏、ロシア、イタリア文学までを射程に入れ、西洋文化の理解に重要な情報も全編に盛り込んだ本書は、ひとりでも多くの人々を文学テクストへといざなう野心的な入門書である。(片渕悦久)