新刊紹介 翻訳 『ユートピア的身体/ヘテロトピア』

佐藤嘉幸(訳)
ミシェル・フーコー(著)
『ユートピア的身体/ヘテロトピア』
水声社、2013年5月

本書は、ミシェル・フーコーが1966年12月に行った二つのラジオ講演「ユートピア的身体」、「ヘテロトピア」を書き起こし、書籍化したものである。後者の「ヘテロトピア」については、改稿され、短縮されたヴァージョンが、「他なる場所[Des espaces autres]」というタイトルで刊行されている(邦訳「他者の場所——混在郷について」、『ミシェル・フーコー思考集成』第X巻)。また、二つの講演の置かれた背景を補完するために、ジュディス・バトラー「フーコーと身体的書き込みのパラドックス」(日本語版オリジナル)、ダニエル・ドゥフェール「『ヘテロトピア』——ヴェネチア、ベルリン、ロサンゼルス間のある概念の苦難」が収録されている。

フーコーは、本書の第一の講演で、世界のゼロ地点として「私の身体」を「ユートピア的身体」と呼び、古代から現代まで様々な身体の例を挙げながら、そしてホメロスから谷崎潤一郎まで様々な作品を引用しながら、身体の潜在的で非人称的な多様性を讃えている。しかし彼は、第二の講演において、眼差しをすぐさま身体から世界へと転換する。そして彼は、私たちの世界の中に常に「反場所」、「他なる場所」としてしか存在しえないような「ヘテロトピア」、私たちの世界を夢幻化し、異化し、規律的に構築し、さらにはその規律化された世界を解体する契機ともなるような「ヘテロトピア」の概念について語るのである。

二つの論考はいずれも、ラジオ講演とは思えないような、詩的で、洗練され、念入りに推敲された文体で展開されている。本書は、多くの論者にインスピレーションを与えた「ヘテロトピア」概念を再考するために、そしてフーコーの文学的側面を再考するために、まさしく必読の書物となるだろう。(佐藤嘉幸)