新刊紹介 | 編著、翻訳など | 『バッカナリア 酒と文学の饗宴』 |
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『バッカナリア 酒と文学の饗宴』
阿部賢一(共編)、小山太一(分担執筆)
成文社、2012年3月
俗に「酒に溺れる」と言うが、それほどまでに「酒」は、多くの人々にとってきわめて身近な存在となっている。とはいえ、「酒」は、「しらふ」から「酩酊」へと身体的な変化をもたらすだけではなく、霊感を授け、芸術表現へと昇華させる能力を授けるとも考えられてきた。だが、しばしば「卑俗な」飲料と看做されることがあったためであろうか、「酒」と「芸術」、とりわけ「文学」の関係を論じた書物は(エッセイなどを除くと)あまり存在していない。
本書は、古代ギリシアに始まり、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、ペルシア、日本、中国といった世界の文学を題材にしながら、文学作品内で言及される「酒/アルコール」に関する記述を読解していくとともに、それぞれの時代や地域によって異なる愛飲の流儀を文化論的にも検討した書物である。古代ギリシアの詩人たちに始まり、ハーフェズ、ゲーテ、阮攸といった古典詩人から、ドストエフスキー、ゾラ、マルカム・ラウリー、さらには、エルネスト・サバト、ボフミル・フラバルにいたる酒の世界文学の系譜をたどってみてはいかがだろうか。(阿部賢一)
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