編著/共著

宮入恭平、増野亜子、神保夏子、小塩さとみ(編著)、垣沼絢子、ほか(分担執筆)

コンクール文化論 競技としての芸術・表現活動を問う

青弓社
2024年1月
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「コンクール」「コンペティション」といった競技制度は、私たちの身近な世界に、いつもある。開かれた競技制度・選抜制度は、近代的な社会制度の一つであり、上演芸術もまた、そうした制度と無関係にはいられない。

本書で取り上げるのは、ショパンコンクール、K-POPのオーディション番組、19世紀フランスの音楽学校の修了試験、ストリートダンスのコンペティション番組、ポールダンスのコンクール、東南アジアの伝統武術シラットの大会、秋田の民謡大会、バリの伝統音楽グンデル・ワヤンのコンクール、アイルランドの伝統音楽のコンペティション、沖縄の伝統音楽コンクール、21世紀日本の学校と音楽コンクール、バレエコンクール、といった、多様な事例である。「パフォーミングアーツを競い合うことの多様性と共通点、魅力やダイナミズム、問題点を浮き彫りにする」という宣伝文通り、本書ではこれらの様々な事例の分析を通して、競技が上演芸術そのものに対し、あるいはその演者や観客に対し、維持・存続・継承・変容といった諸問題をいかに引き起こすのか、それはどのような可能性/限界に満ちているのかを論じている。同時にまた、そうした制度が別の競技においてさらに自由に変容していくさまを、競技を通して人々がしたたかに/しなやかに/タフに/悩みながら/順応しながら生きていくさまを、描きだしている。

それにしても、なぜ、私たちは競技(審査)が持つ「客観的な価値判断」にこだわり、そうした制度を信じようとするのだろうか。なぜ、そうして作り上げた「客観的」な美的質を超えた、人間くさいストーリーや基準外のものに、心を動かされるのだろうか。

本書が取り上げた以外にも、多様で複雑な実践が、数多くあるに違いない。ぜひ、皆様からも色々とご教授頂き、一層の議論を深めていければ幸いである。

垣沼絢子)

広報委員長:増田展大
広報委員:居村匠、岡本佳子、菊間晴子、角尾宣信、堀切克洋、二宮望
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2024年6月30日 発行