編著/共著

土屋誠一、富澤ケイ愛理子、町田恵美(編)

沖縄画 8人の美術家による、現代沖縄の美術の諸相

アートダイバー
2023年11月
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本書は、2023年8月10日〜20日に、沖縄県立芸術大学附属図書・芸術資料館で開催された展覧会の、ドキュメントのカタログである。展覧会のディレクターは、同大学に所属する土屋であり、展覧会には、泉川のはな、髙橋相馬、陳佑而、寺田健人、西永怜央菜、仁添まりな、湯浅要が出品した。「若手」、かつ、精力的に活動をしている気鋭の作家たちの作品を構成することに基づく展覧会であり、なんらかのかたちで「沖縄」にゆかりのある作家たちであること以外に、共通点を持つわけではない。そうした「バラバラ」な作家たちの作品を、「沖縄画」というフレーム(「画」とあるが、絵画作品に限定してはいない)において、一堂に会した際に、なにが起こるのか、その全貌が、本書に収められている。なお、「沖縄画」というワードは、美術家の三瀬夏之介らが率いる「東北画」にインスピレーションを受けたものである。

「沖縄」という地名は、例えば琉球からつながる異文化としての歴史、あるいは基地問題、別の角度からは南国のリゾートと、一面的に解釈されがちであるが、一義的に把握することが難しい複雑さを抱えているうえ、グローバルな社会の流動性に伴い、そうした複雑性は、より増している。そうした現状を踏まえ、いかなる共同体が可能であるのか、その可能性の一端を、一時的な展覧会という形式において可視化させることが、この展覧会の狙いである。本書は、そうした問題意識に基づく編者たちの論考の掲載は勿論のこと、会期中に開催された、三瀬夏之介、大城さゆりをゲストに招いたシンポジウム録も掲載されている。そのため、本書の問いは、沖縄に特殊な問題ではなく、別の地名に置換してもなお成立する、今日における普遍的な「問い」として差し出されている。

(土屋誠一)

広報委員長:増田展大
広報委員:居村匠、岡本佳子、菊間晴子、角尾宣信、堀切克洋、二宮望
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2024年6月30日 発行