編著/共著
ロシア・東欧の抵抗精神 抑圧・弾圧の中での言葉と文化
成文社
2023年9月
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本書は、2022年10月に法政大学で開催された、日本ロシア文学会・日本スラヴ学研究会による同じ題名の合同公開シンポジウムの報告に、一部書下ろしの原稿も加えて編纂された。シンポジウムの企画者で本書の編者でもある石川達夫も「まえがき」で語っているように、この企画は、同年2月に始まったロシアによるウクライナ軍事侵攻をうけて、「抑圧・弾圧のなかでの言葉と文化のあり方を「抵抗精神」という観点から示すこと」にあった。近現代ロシア文学の系譜のなかに、専制的体制を支え文学の言葉に対抗するような「人民」たちの存在を読み解く試み(前田泉)、ソ連初期、ベラルーシやウクライナで前衛詩人・芸術家たちのグループが跡形もなく抹消されていった過程の掘り起こし(奈倉有里)、ポーランド国内でも国外移住後も、ナショナルな全体化から距離を取ろうとした作家ゴンブローヴィチの態度をたどるもの(西成彦)、10世紀の聖ヴァーツラフからヤン・フスを経て20世紀後半のハヴェルにいたるチェコの「抵抗精神」の歴史的系譜を紐解くもの(石川)など、いずれの論攷も興味深いが、私自身は、帝政ロシアの帝国的専制支配への抵抗として始まった19世紀ロシア文学の「国民(ナショナル)化」が、一転して帝国的ナショナリズムへと変質してゆく過程を素描する小論を寄稿した。
(貝澤 哉)