メディア論の冒険者たち
本書は2021年に刊行された『映画論の冒険者たち』に続くものであり、メディアを論じた28名の重要なメディア論者の議論をそれぞれの専門家が簡潔に紹介するものである。メディアに関する著作は近年数多く存在するが、本書は媒介性(medium)に対する関心という観点から、狭義にはメディア論者とは見なされない文学者、哲学者、思想家なども取り上げ、メディア論がもともと特定の学問領域に収まるものではない。
本書は4部構成となっている。「第一部 メディア論のめざめ」ではメディアに対する関心の基礎を築いた論者を議論し、「第二部 メディア論の展開」ではメディア論がテレビをめぐって展開された70年代から90年代の議論を取り上げる。続く「第三部 デジタルのメディア論」では、インターネットとパソコンの普及に伴う流通する文字・画像・音声情報が急激な増大した90年代以降に焦点を当てる。「第四部 メディア論の最前線」では、これらの影響を受けて、現代の問題に取り組む論者を紹介する。「フェミニズム」、「現代社会」、「美学」といったトピックに従って本書を編むことも検討されたが、時代順に整理することで1世紀以上に渡るメディア論の変遷と展開を把握できるように務めた。
各章は、まず取り上げる論者の経歴や思想の概要を提示し、その上でその論者の議論から2、3のトピックを選び出し解説するという形式で執筆されている。また、各章の末尾には関連文献が掲載されており、初学者が自分で学ぶための入門書としても、大学のゼミなどでの購読用の書籍としても適した書籍であろう。
(渡部宏樹)