翻訳
新訳ジュリアス・シーザー (角川文庫 Shakespeare Collection)
KADOKAWA
2023年6月
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ハムレットのTo be, or not to beの苦悩を先取りする「殺すべきか、殺さざるべきか」との悩みを抱えるブルータスを主人公とする悲劇。徳高く立派なブルータスは、なぜアントニーに倒されなければならなかったのか。淡々と理を語るブルータスの散文の演説と、演劇的・煽情的なアントニーの韻文の演説の対比もこの劇の見どころの一つ。2017年6月ニューヨーク市のセントラルパークにあるデラコート劇場でザ・パブリック・シアター公演『ジュリアス・シーザー』(オスカー・ユースティス演出)が上演されたとき、ジュリアス・シーザー役の俳優は、幅広で長すぎる赤いネクタイと金髪のカツラをつけ、見るからに当時の大統領ドナルド・トランプを彷彿とさせる演技をしていた。彼が舞台上で暗殺された瞬間、一人の女性客がStop the normalization of political violence against the right!と叫びながら舞台に上がってきた。現代に直結する作品であることが、このことからもわかろう。この新訳ではシーザー暗殺の合図となるキャスカの台詞Speak hands for me!に新解釈を加えた。
(河合祥一郎)