編著/共著

佐藤元状、冨塚亮平 (編著)、伊藤弘了藤城孝輔、ほか(分担執筆)

『ドライブ・マイ・カー』論

慶應義塾大学出版会
2023年4月
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本書は、濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』をめぐる論文集である。「『ドライブ・マイ・カー』論」というシンプルな題名は、その単独性を強調している。しかし、私たちの本はあくまで論文集であり、その複数性を特徴としている。9本の論考に加えて、3本のインタビュー(なんとそのうちのひとつは、濱口監督へのインタビューである)が含まれていて、さまざまな角度からひとつの作品を論じることを目的としている。そのためキャスティングには、多様性を心がけたつもりである。アメリカ、日本、香港、台湾、韓国の研究者を一堂に集め、私たちを魅了した濱口映画についてとことん論じた成果がこの論文集なのである。

本書の読みどころのひとつは、冒頭のふたつの論考である。D・A・ミラーの「『ドライブ・マイ・カー』のせいで気が狂いそうだ」と、斉藤綾子の「『ドライブ・マイ・カー』を斜めから読む」は、それぞれクィア批評、フェミニズム批評の洗練されたアプローチを特徴としており、読み応えがある。濱口映画の核心に踏み込んだ緻密な考察となっている。上述の濱口監督のインタビューには、これらの論考に対するレスポンスが含まれており、是非とも合わせて読んでいただきたい。その他の論考も一緒に読んでいただければ、編者としてこれ以上嬉しいことはない。

(佐藤元状)

広報委員長:増田展大
広報委員:居村匠、岡本佳子、髙山花子、角尾宣信、福田安佐子、堀切克洋
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2023年10月17日 発行