編著/共著
視覚と間文化性
法政大学出版局
2023年4月
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本書は、アメリカの思想史家マーティン・ジェイの『うつむく眼(Downcast Eyes)』の翻訳に携わった研究者たちを中心に、同書についての14の論考を集成したものである。『うつむく眼』は、20世紀以降の思想・哲学が視覚中心主義への批判を基調としているというテーゼをもとに、とりわけ20世紀を代表するフランス現代思想の哲学者たちが視覚芸術に対してどのような批判的言説を提示してきたかを網羅的に考察するものであった。本書は、立命館大学間文化現象学研究センターのメンバーを中心に、『うつむく眼』翻訳刊行の際にマーティン・ジェイを招き、それぞれの翻訳担当箇所をもとに、ジェイの論考についてさらなる考察や批判を当人に対してぶつけたシンポジウムの記録でもある。扱われる哲学者は『うつむく眼』で取り上げられた哲学者たちと対応しており、ニーチェ、フッサール、ハイデガー、メルロ=ポンティ、レヴィナス、イリガライ、グラネル、デリダなどの視覚論の考察とジェイの所論が批判的に検討される。ジェイ自身の日本での講演の翻訳も収めた本書は、現代哲学における視覚と視覚芸術の位置づけについて、その批判的吟味とともに、今後の美学・芸術論の展開に貢献するものとなろう。
(加國尚志)