プラットフォーム資本主義
テクノロジーと資本主義をめぐる状況は日々めまぐるしく移り変わっている。「プラットフォーム、ビッグ・データ、3Dプリンター、先端ロボット工学、機械学習、モノのインターネット」等々。これらのテクノロジーが私たちと無関係ではないのは、それがいまや私たちの生活の隅々にまで浸透しているからである。卑近な例では、イーロン・マスク以後のtwitterの揺動は、プラットフォームがいかにオーナーの思惑に左右されるか、その脆弱性を示している。
スルネックは本書においてデジタルテクノロジーと資本主義の歴史をたどることで、「なぜわたしたちが今日こうした経済に置かれているのか」、「今日の経済が以前の問題にどのように呼応しているのか」という問いに答えている。デジタル・エコノミーの過去・現在・未来について簡潔な整理をおこなう本書は、プラットフォーム経済に限らず現代の資本主義社会に関心をもつ多くの人に有用な見取り図を示すだろう。
本書はカナダ出身の哲学者・経済学者ニック・スルネックの初の単著である。その射程とさらなる展開については水嶋一憲がすでに書評にて指摘している[図書新聞(2023年4月1日)]。スルネックの共著『Inventing the Future: Postcapitalism and a World Without Work』(Verso, 2015)の翻訳も予定されていると聞く。『プラットフォーム資本主義を解読する』(水嶋一憲ほか編著、ナカニシヤ出版、2023年)といった関連書籍とともに、日本でも今後さらに当分野の研究が進んでいくことが期待される。
(居村匠)