高松次郎 リアリティ/アクチュアリティの美学
高松次郎は、戦後日本美術を代表する作家の一人である。1960年代は、読売アンデパンダン展に出品する一方、赤瀬川原平や中西夏之らとハイレッド・センターを結成して様々なイベントを行い、前衛美術の中心で活動した。1990年代から再評価が進み、回顧展が何度も開催され、ここ10年ほどは、光田由里『高松次郎 言葉ともの 日本の現代美術 1961–72』(水声社、2011年)、沢山遼・野田吉郎・桝田倫広・森啓輔『Jiro Takamatsu Critical Archive』(ユミコチバアソシエイツ、2012年)といった研究書、1964年以降の作家論を集成した論集(神山亮子・沢山遼・野田吉郎・森啓輔編『高松次郎を読む』(水声社、2014年))が刊行されるなど、高い関心を呼んできた。
本書は、こうした研究動向を踏まえつつ、1960年代末から1970年代末までの仕事、すなわち、「単体」シリーズ、「複合体」シリーズ、《題名》、
(加治屋健司)