編著/共著
変容するシェイクスピア ラム姉弟から黒澤明まで
筑摩書房
2023年2月
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本書の目的は、特定の作品に焦点を当てて、シェイクスピアならびに翻案作家の創作技法を示すことにある。具体的には、以下の4章から成る。イギリス小説においてシェイクスピアがどのように意識されてきたのかを概観する序章、シェイクスピア作品とはそもそもどのような舞台上演だったのかを論じる第1章、19世紀のチャールズ・ラムとメアリー・ラムの姉弟による児童文学翻案『シェイクスピア物語』について分析する第2章、20世紀の映画翻案であるローレンス・オリヴィエ監督『ヘンリー5世』と黒澤明監督『蜘蛛巣城』について考察する第3章である(序章と第2章は廣野由美子氏、第1章と第3章は桒山が担当)。シェイクスピア翻案は無数に存在するが、これらの作品は劇場の外で、しかも原作の物語の一部ではなく全体を扱い、商業的にも成功した初期の例である。『シェイクスピア物語』についての第2章は、いかに演劇の多面的視点が小説の語りへと変換されたのか考察しつつ、そこにメアリー・ラムの起こしたショッキングな事件が与えた影響も探る。第3章は、オリヴィエが演劇の台詞にどのような映画技法を用いたのか、また、黒澤が原作の台詞を全く使わずにいかに『マクベス』を、日本を舞台とする映画へと移し替えたのか検討した。
(桒山智成)