翻訳

ミシェル・フーコー(著)、阿部崇、福田美雪(訳)

狂気・言語・文学

法政大学出版局
2022年9月
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本書は、1967年にチュニジアで行われた二つの講演の書き起こしを中心として、それに関連する草稿や講演の下書きなど13のテクストを収めており、二つの講演以外は初出である。それらのテクストは、執筆時期が不明ながら初期の書きものと推定されるバタイユ論1篇を除いて1960年代後半のもの。大まかに「狂気」をめぐるものと「文学」をめぐるものに分けられるが、その二つを媒介するのが「言語」という主題であり、本書の三題噺のごときタイトルはそれなりに相応しい。狂気をめぐる考察には『狂気の歴史』とは別の視点からの議論が含まれ、文学をめぐる考察には、これまで知られていた文学についてのテクスト群には見られなかった「言語外的なもの」なる概念も登場する。この概念は一筋縄ではいかないが、文学論の枠組みを超え、『知の考古学』における議論の萌芽となるものとも考えられよう(『言葉と物』刊行直後のフーコーの思考の転回がそこに見出されるかも知れない)。他にもバルザック論やプリエートの言語学への参照など、これまでのフーコー・コーパスに見られなかった新たな要素を多く含んだ、さまざまな知見とヒントに満ちた著作である。

(阿部崇)

広報委員長:増田展大
広報委員:岡本佳子、髙山花子、福田安佐子、堀切克洋、角尾宣信、居村匠
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2023年2月22日 発行