詩人はすべて宿命である 萩原朔太郎による詩のレッスン
萩原朔太郎は、日本における詩人批評家の先達であり、その詩歌のみならず詩論も、いまこそ新しく読み直されなければならない──。その確信を深めた、四年間の編集作業だった。
松浦寿輝先生が会長を務める、萩原朔太郎研究会の席で、最初に国書刊行会よりお声掛けいただいたのは2018年秋だった。中断を挟みつつ、ともに表象文化論学会員で朔太郎研究会幹事を務める栗原飛宇馬さんを共編者に、朔太郎没後80年の全国企画「萩原朔太郎大全2022」に連動して刊行できたのは幸いだった。
本書は、朔太郎による詩歌論・日本語論、詩人論、詩集『月に吠える』から『宿命』にいたる自作解説等からなる。栗原さんの意見を参考に安が選定・配列した。朔太郎研究会・前会長の三浦雅士先生から〈画期的な詩論集〔中略〕朔太郎全集を圧縮して、一缶の美味しいジュースにした感じ〉(毎日新聞2022.10.29.)との評価をいただいたのは幸いだった。
萩原朔太郎が現代詩入門書を企画したら、どの自作エッセイを収録するか? というコンセプトが原点なのだけれども、本書巻頭に置いたその名も「詩の作り方」は、じつは「詩の作り方は存在しない」という趣旨であり、朔太郎の、詩人であることの宿命と覚悟を述べたエッセイである。本書タイトル「詩人はすべて宿命である」も、このエッセイの一節から取った。編者それぞれの解説・解題も朔太郎愛に満ちており、是非ご覧いただきたい。
(安智史)