レヴィナス読本
インターネットの検索エンジンなどで「レヴィナス」を検索しようとすると、予測検索の上位に「レヴィナス わかりやすく」が出てくる。これは、レヴィナスという哲学者への関心がそこそこあること、とはいえそこに難解さを感じる方が多くいることを物語っているだろう。本書は、レヴィナス哲学に関心を寄せる研究組織であるレヴィナス協会が中心となって、そうした初学者や関連領域の研究者などを対象に、レヴィナス哲学への導入を目指したものである。法政大学出版局の哲学者読本シリーズにはさまざまな性格があるが、本書では専門的な観点からの研究成果をまとめた論集という形態はあえてとらず、基本概念や著作の解説を軸とし、また、哲学・倫理学はもとより、主に人文・社会科学の隣接領域との関連を示すことに主眼を置いた。冒頭にレヴィナスの来歴の紹介、巻末に日本語で読める文献一覧も添えた。このように「レヴィナス入門」という性格を帯びているものの、他方でこの間の新資料(草稿や講義録など)の公刊や新たな研究の蓄積は踏まえている。そのなかには、従来定番とされていた解釈ではスポットがあまり当てられてこなかったが、新たに注目を集めている論点などもある(「糧」概念や、福祉・ケアへの注目、ポストコロニアリズムとの関連など)。本書ではそうした最新の研究状況もできるだけ反映することも試みられている。
(渡名喜庸哲)