概念と生──ドゥルーズからアガンベンまで
著者自身が「はじめに」の註で述べるように、現代思想のさまざまな概念をあつかう本書はいわゆるアカデミックな著作をめざしたものではない。もっとも、そうした一種のアマチュア精神の宣言はあらかじめ批判を封じるエクスキューズではない。たしかにその論述は、先行研究の可能なかぎり網羅的な調査と整理のうえで新たな論点(いわゆる「独創性」)を提示するというオーソドックスなスタイル
本書の稀有な点は、なにより著者自身が納得できるまで考え抜く姿勢にある。アカデミックな観点からみれば「型破り」な本書は、しかしこの姿勢のゆえに、自身の専門にあぐらをかくことなく、先人の教えを請いながら、新たな領域をみずからの足で進んだ記録となっている
*1 著者の専門分野はフランス文学だが、1989年にパリ大学(ソルボンヌ)に提出された博士論文(Les Théories de la versification française au XIXe siècle)がフランスにおける詩法の変遷を当時の資料の調査を通じて明らかにするフーコー的な試みであったことを考えれば、そもそも専門分野においても「型破り」な精神が存分に発揮されていたと言える。
(宇佐美達朗)