単著
お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード ジェンダー・フェミニズム批評入門
文藝春秋
2022年6月
本書は、著者が様々な雑誌において発表した(書き下ろしを含む)29本のジェンダー・フェミニズム批評が収録された1冊である。私にとって批評文を読むことは食わず嫌いであった。特に勉強不足を自覚している映画に関して、作品を観てもいないのにその批評を理解できると思えなかった。しかし本書は取り上げられた作品を未見であっても、ジェンダー・フェミニズムに関する歴史や理論も交えた論考を、楽しくわかりやすい口調で読ませてくれて、その世界観を筆者の切り口で豊かに見せてくれる。
そもそも演劇やバレエなどの舞台芸術、特に私が取り組んでいるインプロ(即興演劇)は、その場限りで全てが消えてしまうのだった。私たちは実際にその作品を観ることができなくても、批評を読むことから共に考え行動していくことができる。著者はいくつかの作品において「あったことがなかったことに」されたり、女性のファンは「いるのに、いない」とされていることをジェンダー・フェミニズムの視点から批評していた。私は今までいないことにされてきた人々や、表にでてこなかったストーリーをインプロのステージで描きたいのだということを改めて確認できた。
そしていつか著者による「宮沢りえ論」を、ぜひ読んでみたい!
(直井玲子)