編著/共著

元森絵里子、高橋靖幸、土屋敦、貞包英之(分担執筆)

多様な子どもの近代 稼ぐ・貰われる・消費する年少者たち

青弓社
2021年8月
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アリエス以後、保護され、教育される対象としての子どもが近代において誕生したとくりかえし語られてきた。この見取り図はかならずしもまちがってはいない、しかしそれが有効なのは、近代的な権力のまさしく準拠点とされてきた「学校」や「家族」という装置を中心にあくまで歴史を語る場合のことだろう。学校や家族に取り込まれることが、年少者の宿命であったと語られることで、こうした物語は国家が望む歴史と共振し、だからこそ日本社会でも受け入れられてきたのである。

とはいえどこまでそれを、律儀にくりかえし続ける必要があるのだろうか。学校や家族を通過するように暮らしてきた年少者たちの姿をみると、国家が要請する物語とは異なる「近代」を生きた主体の姿が浮かび上がる。みずから働き、小遣い銭を稼ぐ年少者、そうして雑業をはたす主体としてやり取りされ、家族とは異なる環境で暮らす年少者。こうした年少者を対象として、活動写真や紙芝居などの娯楽も、時には学校や家族によって規制されながらも独自の表象の空間をつくってきた。

たんに過去の物語ではない。私たちの周りでは、学校や家族によって保護されず多様な労働環境やメディア環境で生きる年少者たちの姿が急速にみえ始めている。その意味で学校や家族を中心とする物語の外を生きた年少者の「近代」を問うことが早急に必要なのである。

(貞包英之)

広報委員長:香川檀
広報委員:大池惣太郎、岡本佳子、鯖江秀樹、髙山花子、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2022年3月3日 発行