SFプロトタイピング SFからイノベーションを生み出す新戦略
SFプロトタイピング ── デザイナーや研究者、マネージャー、働き手といった多様なメンバーとともにSFの物語をプロトタイピングすることで、新しいプロダクトやサービス、労働、生活、公共、社会の未来の試作品=プロトタイプを創造しようとする営み ── つまり、SFを使って現実の未来を変えようとする試み。
芸術や表現を研究する人にはいささか軽薄に響くかもしれない。だが、SFプロトタイピングは本気で未来を変えようとしている。
『SFプロトタイピング SFからイノベーションを生み出す新戦略』は、SFプロトタイピングがどのように企業や国で採用されているのかについて日本、中国、アメリカでの話を軸に五つの座談会で紹介、加えて実践例や効果測定、哲学からの三つの論考を収録する。
類書となる『SF思考』(ダイヤモンド社)では作例やケーススタディ、『未来は予測するものではなく、創造するものである』(筑摩書房)では思想的背景が豊富に論じられており、本書はこれらの間をつなぐハブとなり、SFプロトタイピングの現在と可能性を眺望するための地図として役立つだろう。
これまで、未来を想像することはアーティストや思想家の役割だった。一握りのエリートのビジョンが大勢を魅了するモデル。だが、ふつうのわたしたちにこそ未来を創る権利と義務がある。ともに未来を創ること。できればこの本からあなたと想像力で世界を変えたい。
(難波優輝)