編著/共著

木村朗子、アンヌ・バヤール=坂井(編著)、沼野 充義、いとう せいこう、木村 友祐、ダニエル・C・オニール、藤原 団、ほか(著)

世界文学としての〈震災後文学〉

明石書店
2021年3月
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ずっしりと重い、500ページを超える論集である。奥付は2021年3月11日、つまりあの震災からちょうど10年後。本書のもとになったのは、木村朗子氏(津田塾大学)とアンヌ・バヤール=坂井氏(フランス国立東洋言語文化大学、略称INALCO)の二人が組織してINALCOで2018年と2019年に開催した二つの国際学会である。本書はこの二度にわたるパリでの学会の参加者から募った17本の論文を中心にし、さらに作家のいとうせいこう、木村友祐、そして沼野充義が「特別寄稿」を寄せ、木村朗子が序文に当たる「総論 震災後文学の現在地」で「震災後文学」とは何かを整理し、アンヌ・バヤール=坂井が終章「娯楽小説としての震災後小説、または認められざる3・11後文学について」で締めくくっている。このように盛沢山の論集であるため、個々の論文の内容に立ち入った紹介はここではできないのだが、寄稿者の半ば以上が「外国」の研究者であるということは改めて強調しておきたい。いや、外国とか日本といった区別がもはや従来のような意味を失うような「世界文学」の場が、「震災後文学」(フクシマ後、3・11後と呼んでもいいのだが)という新たに突然開けたディシプリンにおいて成り立っていることを本書は示している。バヤール=坂井氏はあとがきで、「新しい研究フィールド」において、「どのように3・11後文学は構築され発展し(‥‥‥)、文学研究の上でどのような新しい問題提起や論点が浮かび上がってきたか」を確認することがこの論集の一つの目的であったと結んでいる。

(沼野充義)

広報委員長:香川檀
広報委員:大池惣太郎、岡本佳子、鯖江秀樹、髙山花子、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2021年10月25日 発行