編著/共著

長谷川祐子(編著) 、エマ・ラヴィーニュ、小林康夫、毛利嘉孝、北野圭介、三木学、加治屋健司、宮沢章夫、清水穣、星野太、エマニュエル・ドゥ・モンガゾン(著)

ジャパノラマ: 1970年以降の日本の現代アート

水声社
2021年5月
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本書『ジャパノラマ/Japanorama:1970年以降の日本の現代アート』は、2017年に、パリのポンピドゥ・センターの分館であるポンピドゥ・メッツ(メッツ市)で開催された「Japanorama」展のカタログ(フランス語で出版)の日、英の書籍版である。日仏11人の執筆者によるテキストおよび、展示記録写真、展示レイアウト、作家参考図版により構成される本書は、カタログを超えて、日本の現代美術と視覚文化を論じ、紹介する重要な文献の一つとなるといえよう。108人の作家を、クロノロジカルでなく、6つのキーワードにそって配置した「Japanorama」展は3ヵ月の会期で10万人を動員し、『ニューヨーク・タイムズ』一面にレビューが掲載されるなど、高い評価を受けた。日本の現代アート史を紹介する展覧会はパリのポンピドゥ・センターで開催された「前衛芸術の日本 1910-1970」(1986年)以来、30年ぶりであり、同展のカタログはフランス語のみでであったことを鑑みると、本展の内容が和英で紹介されることは資料的な価値も高い。

単なる「紹介、解説ではなく」ユニークな批評的観点から日本の現代アートについて各執筆者が論じたテキストは、複合的な文化背景をもつ日本の現代美術を、視覚文化、思想、政治社会的背景とかかわらせた、群島的な多様性をもっている。日本の現代美術、視覚文化はグローバル化にもかかわらず海外への発信が遅れている。post war、1950年代から70年代までと異なり、70年代に続いて、文脈、内容ともに多様性をきわめる1980年代から現代までの日本の現代アートのoverviewは海外では企画されておらず、今後の議論のための一つの視座を提供したといえよう。

(長谷川祐子)

広報委員長:香川檀
広報委員:大池惣太郎、岡本佳子、鯖江秀樹、髙山花子、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2021年10月25日 発行