編著/共著
沖縄映画研究会3周年記念誌 女優・真喜志きさ子
蜻文庫
2021年3月
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沖縄出身の元女優、真喜志きさ子は沖縄芝居のスターである真喜志康忠と上間初枝を両親に持ち、幼少時からたびたび子役として舞台に立った。上京後、荒戸源次郎主宰の劇団「天象儀館」に入団し、1980年代初頭には鈴木清順監督作『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)や主演を務めた『時の娘』(内藤誠監督、1980年)をはじめ何本かの映画やテレビドラマに出演したほか、雑誌『明星』のグラビアを飾るなど新鋭のスターとして注目を集めた。本書は戦後沖縄芸能史における真喜志康忠の位置づけ、上間初枝が所属していた乙姫劇団でのきさ子の活動、子役として出演した映画『山原街道』(大日方傳監督、1958年)、荒戸と出会ったのちに彼女が出演した三本の劇映画、佐木隆三作のNHKラジオドラマ『珊瑚礁の島で』(1980年)、老年を迎えた母親との関係を描いたきさ子自身によるエッセイ、天象儀館時代をめぐるインタビューなどを通して、真喜志きさ子の女優としてのキャリアを多角的に検討する。琉球方言を用いた舞台芸術として独自の発展を遂げた沖縄芝居に関心のある向きのみならず、米軍統治下の沖縄における映画製作の歴史や、撮影所システム崩壊後の日本映画における演劇と映画の越境を理解するうえで示唆に富む内容である。
(藤城孝輔)