翻訳

ミシェル・ビュトール(著) 石橋正孝、鈴木創士、三ツ堀広一郎、福田桃子(訳)

ミシェル・ビュトール評論集

幻戯書房
2020年12月
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20世紀フランス文学を代表する詩人・作家・批評家であるミシェル・ビュトール(1926-2016)は、大判の各巻がいずれも900頁を超える全12巻の個人全集をもってしても網羅しきれないほど膨大かつ多彩な作品を遺した。そのうち、エッセイの分野の作品といえば、なんといっても1960年から1982年にかけて刊行された全5巻の評論集『レペルトワール』である。各巻21編、全105編の収録作は、時代も国も異なる作家たち、芸術家たちを次々に俎上に挙げ、一人の人間がこれだけ広範な「レパートリー」を持ちえたという事実に誰もが呆然とするのみならず、その平易でありながら高度な内容は今なおまったく新鮮さを失っていない。残念ながらこれまで散発的にしか紹介の機会に恵まれず、おまけに派手な批評概念を一切用いていないため、日本ではやや埋没していた感のあるこの恐るべき「万華鏡」を、フランス語を解する者たちだけが独占している状態は不当であると長らく感じていた者として、第1巻の刊行から60年の昨年度末にその邦訳を幻戯書房より刊行できたことは、この上ない喜びというほかない。今年中に第2巻を上梓し、以後、最終第5巻まで1年に1巻ずつ刊行の予定なので、ぜひお手に取っていただければ幸いである。

(石橋正孝)

広報委員長:香川檀
広報委員:白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2021年6月30日 発行