翻訳

ハロルド・ローゼンバーグ(著) 、桑田光平、桑名真吾(訳)

芸術の脱定義

水声社
2020年9月
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マルクス主義と実存主義が混じり合った思想を基盤として活動したアメリカの文明批評家ハロルド・ローゼンバーグ(1906~78)は、「アクション・ペインティング」の名付け親として知られる。ローゼンバーグは本書で、「アクション」の概念に少なからぬ修正を加えながら、作家の個が矮小化された現代において、創作はいかなる形をとるべきか、あるいは個人はいかに生きるべきかといった倫理的次元の問いを投げかけている。

本書には、1960~70年代の現代美術の動向を、「脱定義」という鍵概念に基づいて批評したエッセイがまとめられている。その内容を要約すると、ローゼンバーグの同時代美術は伝統的なジャンルである絵画・彫刻を捨て、集団性や匿名性、偶然性のなかに個を埋没させる傾向があるということである。ローゼンバーグは、しかしながら、「脱定義」のプロセスにある芸術を再定義することをしない。彼の美術への問いは、自らの行き着く先を知らぬまま制作する=アクションする作家像を理想として打ち立てている以上、常に開かれたままであるのだから。この批評家としてのアイロニカルな態度に、ローゼンバーグ批評の真価が現れている。

桑名真吾

広報委員長:香川檀
広報委員:白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2021年3月7日 発行