編著/共著
アーレント読本
法政大学出版局
2020年7月
複数名による共(編/訳)著の場合、会員の方のお名前にアイコン()を表示しています。人数が多い場合には会員の方のお名前のみ記し、「(ほか)」と示します。ご了承ください。
今、ハンナ・アーレントが新たに読まれてはじめている。従来、「全体主義」や「公共性」といった鍵語とともに、政治思想の文脈で論じられがちだったが、近頃は、哲学・倫理学はもとより、いっそう幅広い分野において注目を集めている。本書は、日本アーレント研究会が中心となり、狭義のアーレント研究者に限らず、比較的若手から中堅の研究者を中心に、アーレントの思想を多角的に描き出すことを目的としている。第一部では、「愛」からはじまり、「全体主義」や「活動」を経て、「世界」へといたるアーレントにおける基本概念に解説が加えられる。第二部は「現代世界におけるアーレント」と題され、フェミニズム、科学技術論、芸術論といった諸分野、あるいは法、自由、悪、責任といった大きな主題のなかで、どのようにアーレントの思想が位置付けられるかが検討される。随所に散りばめられたコラムでは、とりわけ関連のある思想家との関係を中心に、それぞれの分野の専門家が筆を執る。そのほか、アーレントの著作や書簡集がどの時期にどの順で書かれたのかを一望できる「著作マップ」、諸外国でのアーレント受容をまとめた論考、著作解題および略年譜が収められる。新たなアーレント読解のための入り口となるだろう。
(渡名喜庸哲)