編著/共著
新時代のミュージアム 変わる文化政策と新たな期待
ミネルヴァ書房
2020年9月
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本書は、文化政策・文化行政、まちづくりといったより広い文脈にミュージアムを置き、指定管理者制度やマーケティングなどの、ミュージアムと社会をつなぐ仕掛け、必要な仕組み・視点を重点的に論じるものである。また、具体的な事例や国際的な動向に言及しながら、わが国のミュージアムの運営・経営課題を指摘し、今後のあり方の提言も行っている。
本書の問題意識の背景には、今日のミュージアムに期待される社会的役割の増大がある。資料の収集と保存、調査研究、展示、教育普及活動といった基本的機能を維持しつつ、市民の自己啓発・学習活動の支援、生活における「第3の場所」としての役割、地域におけるアイデンティティの確立、地域ブランディング・地域経済・観光への貢献など、さまざまな側面から地域社会に貢献することが期待されている。本書は、このようなトレンドを、文化経済学、文化政策学、博物館学の3名の著者が多面的に論じるタイムリーな企画であると自負している。
このように広範な内容を体系的に論じる本書であるが、基本的には学芸員資格取得を目指す学生にとってもわかりやすい内容を目指した。他方、いわゆる教科書的なレベルにプラスして、研究者にとっても重要な論点を含み、またミュージアムで実際に働くスタッフや文化行政の担当者にも役立つものである。ぜひ手にとってもらいたい。
(土屋正臣)