翻訳

マグリット・デュラス、フランソワ・ミッテン(著) 坂本佳子(訳)

デュラス×ミッテラン対談集 パリ6区デュパン街の郵便局

未来社
2020年3月
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本書は、1985年から翌年にかけて行われたフランソワ・ミッテランとマルグリット・デュラスの5つの対談をまとめたものである。第二次世界大戦中、デュラスとその夫のロベール・アンテルムはミッテラン率いるレジスタンス運動に参加、だが、デュパン街の会合でゲシュタポに踏み込まれ、ロベールは逮捕される。間一髪で難を逃れたミッテランは、終戦後、ダッハウ解放の命を受けて収容所に向かい、瀕死の状態で横たわるロベールを見出す。恐怖、そして友愛の奇跡を共有した作家と政治家の対話は、ここから始まっている。

1980年代の米ソ冷戦終焉の兆しに立ち会う彼らは、フランス、アフリカ、アメリカの大地の詩情を語るが、繰り返されるテロや人種差別的な暴力がそこに植民地主義の影を落としている。軽快な会話の中で明かされる防衛に関する二人の見解は、デュラスの作風と衝突し、ミッテラン時代に広がる霧を暗示しているようでもある。これらも含めて、旧知の友同士の語らいのとりとめのなさ、行き違い、ためらい、忘却それ自体が、20世紀の現実についての社会的な沈黙のありかを証言しているように見える。巻頭にはマザリーヌ・パンジョの序言、巻末にはヤン・アンドレアとジャン・ミュニエの証言がつく。

(坂本佳子)

広報委員長:香川檀
広報委員:白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2020年10月20日 発行