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シンポジウム メディア・スタディーズにおけるモノとデータ 『スクリーン・スタディーズ デジタル時代の映像/メディア経験』を読む」

報告:大久保遼

日 時:2019年8月4日(日)13:30~17:30
会 場:東京経済大学国分寺キャンパス6号館3階F305教室
主 催:新潟大学地域映像アーカイブ研究センター
共 催:KoSAC

第1部
問題提起:原田健一(新潟大学)水島久光(東海大学)羽鳥隆英(新潟大学)仁井田千絵(立教大学)

第2部
応答:光岡寿郎(東京経済大学)大久保遼(明治学院大学)近藤和都(大東文化大学)、gnck(批評家)、馬定延(明治大学)、松谷容作(国士舘大学)、溝尻真也(目白大学)

第3部 全体討論


2019年8月4日(日)、シンポジウム「メディア・スタディーズにおけるモノとデータ:『スクリーン・スタディーズ デジタル時代の映像/メディア経験』を読む」が、東京経済大学において開催された。このシンポジウムは、2019年2月に刊行された『スクリーン・スタディーズ:デジタル時代の映像/メディア経験』(東京大学出版会)における議論を起点に、新潟大学地域映像アーカイブ研究センターのメンバーから投げかけられた問題提起に対し、論集の執筆陣が応答する形で進められた。

まず原田健一(新潟大学)より、論集全体の構成やキーコンセプトとなる「スクリーン」の位置づけに対して、現実社会とメディアの相互的な構成という視点からコメントがなされた。また水島久光(東海大学)はスクリーンとインターフェイスという概念を比較しながら、対象であり方法である「スクリーン」が見出されるとき、その背景にある「問い」は何かと投げかけた。次に羽鳥隆英(新潟大学)は、古典的な映画それ自身に含まれている異種混淆性を取り上げ、初期映画、古典期、現代の動的な連続性が改めて確認される必要性を強調した。最後に仁井田千絵(立教大学)より、映画史と放送史の接点としてのラジオの問題、また映画館におけるライブ・ビューイングなど映画以外のコンテンツの上映を取り上げる方法についてさらなる検討が必要であるとの指摘がなされた。

これに対して、まず論集の編者2名より応答のコメントがなされた。光岡寿郎(東京経済大学)は「スクリーン」という概念の広がりについて英語圏における議論をより詳細に紹介した上で、それが既存の研究に対して持ちうる可能性について改めて整理を行った。また大久保遼(明治学院大学)は、多様な方法や領域の垣根を超えて「スクリーンという問題」を共有することで、概念や方法についての議論を継続していくことの意義を強調した。続いて、論集の執筆者より、近藤和都(大東文化大学)、gnck(批評家)、馬定延(明治大学)、松谷容作(国士舘大学)、溝尻真也(目白大学)が議論に加わり、各章の個別の論点やアプローチについての応答が行われた。

その後、会場も含めた質疑応答が行われ、論集全体を通じて、映像史の歴史記述の変化と現在のスクリーンの変容の関係、デジタル化以降のメディウム性やマテリアリティの変容をいかに分析するか、カルチュラル・スタディーズが提起した文化の政治学と映像研究の関係、音響や音楽の不在をどう考えるか、あるいはアーカイブ研究・実践との架橋の可能性などについてコメントが投げかけられた。『スクリーン・スタディーズ』を出発点とした今回のシンポジウムでの議論は、映像研究のみならず、表象文化論、映画研究、視覚文化論、美術史、美術批評、文化研究、アーカイブ研究など領域横断的な研究手法を構築していく可能性や、デジタル化以降大きな変動期を迎えているメディア・スタディーズの今後を考える上でも多くの示唆に富むものであったと言えるだろう。

(大久保遼)

広報委員長:香川檀
広報委員:白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2020年2月29日 発行