編著/共著

荒木優太(編著)、伊藤未明、ほか(著)

在野研究ビギナーズ 勝手にはじめる研究生活

明石書店
2019年9月
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15人の在野研究者(本書では「大学に属さずに学術研究を行う人」と定義している)による、自らの研究生活の体験談や大学の外部で研究することの意味についての論考を、「働きながら論文を書く」「学問的なものの周辺」「新しいコミュニティと大学の再利用」という3部にまとめて構成している。昆虫学の研究者が第4章を執筆している以外は人文・社会科学系の研究者が執筆しているが、理工学・医学系の場合、研究機関に所属せずにデータ収集・解析を行うことが難しいという背景があるだろう。本の帯には、在野研究のノウハウ集であることが謳われているが、15人14篇のエッセイ(うち1篇は2人の書き手による共著)の内容は様々であり、自身の経験に基づく時間管理や文献資料の利用法などのノウハウを書く章もあれば、「そもそも研究者とはどういう人か」「研究とはどういう営為か」という根源的な問いを考察しているエッセイもある。本書を読み進めるうちに、職業研究者と在野研究者(あるいはアマチュア研究者)の境界が曖昧であるばかりでなく、研究者とその辺縁部の区切りもまた、容易に判別し難いものであることがわかる構成になっている。これによって読者は、「職業研究者」と「在野研究者」との間の対立構造よりも、研究者のありかたの多様性に気づかされる。そして大学の〈ウチ〉と〈ソト〉の対話と交流が、その多様性を支える重要な基盤として機能しうることに思いを巡らせることになるであろう。なお、巻末に15人の書き手が選んだ「在野のための推薦本」というブックガイドの節が設けられており、在野かどうかに関係なく研究生活を支援する資料としても興味深いリストになっている。

伊藤未明

広報委員長:香川檀
広報委員:白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2020年2月29日 発行