編著/共著
表現と教養 スキル重視ではない初年次教育の探求
ナカニシヤ出版
2019年3月
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近年、アクティブラーニング、反転授業といった「魔法」が日本の高等教育の現場に浸透し、表面的な教育改革になっている。煙に巻かれることがなきように本書は編まれた。
第Ⅰ部では、「アカデミック・ライティングの指導」を充実させるための論考3本とシンポジウムを紙上再録した。興味深いのは、200余名のレポートを分析した論考(1章)、米国の有名大学において日本を研究する専門学科でどのように日本語習得の教育がなされているのかについての事例も含めた論考(2章)、留学生向け日本語教育の実践をいかにして母語を日本語とする学生へ論文指導に活かすかという論考(3章)、そして、シンポジウムでは、非常勤講師の人選方法にも言及している(4章)。
第Ⅱ部では、表現の意を広く捉え、初年次教育、教養教育の現場で新たな表現教育のカリキュラム開発を念頭とした、STEAMを意識した教育実践を交えた論考(5章)、プレゼンテーション教育の実践を交えた論考(6章)が収録されている。
最終章では、学術書籍編集者による本書のような指導法を論じるスタンスへの批判を自身の編集方針をベースにした語り口調の論考が提示される(7章)。
本書には、いかなる専門にかかわらず、大学教育に関わる人ならば正面から考えておかなければならない問題が随所に鏤められている。
(東谷護)