編著/共著
教養教育再考 これからの教養について語る五つの講義
ナカニシヤ出版
2019年3月
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教養を語るのは難しい。大学における教養教育と限定してみても、なかなか手強い相手だ。にもかかわらず、この国では、教養教育は「専門ではない」ために、一段、いやそれよりも下位のものとして扱われてきた。戦後、日本の大学を取り巻く環境もおおいに変化があった。大学の大衆化、教養部解体、大学院重点化、国公立大学の法人化、教育の質保証、初年次教育、アクティブラーニングと鍵語が目まぐるしく登場した。それでも、教養教育は存在する。
そうであるならば、教養教育を生産的に捉えなおすことが出来ないだろうか。そのヒントあるいは議論の叩き台として、本書では五つの講義(英語教育、高等教育論、情報メディア、科学リテラシー、音楽文化)を収めた。執筆者の年齢構成は90歳から30代後半までというように幅広い世代からなっている。
なお本書では、大学で教養教育科目を教える、ということに関しては、広く市民へ専門知を発信するという意味にまで解釈している。つまり、ここでいう「教養」とは、大学教育を中心としながらも、大学だけに閉じないで広く市民にも向けたものである。
本書はワンテーマを扱った新書よりも、幅広い知識の獲得はもとより、知的好奇心を満たしてくれるだろう。誰もが、いつでも参照できるように図書館に並べられるべき一冊である。
(東谷護)