編著/共著

西田紘子、安川智子(編著)、大愛崇晴、関本菜穂子、日比美和子(著)

ハーモニー探究の歴史 思想としての和声理論

音楽之友社
2019年1月
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音楽は誰にとっても身近なものだが、音楽理論や和声理論となると、とたんに専門家だけの世界に閉じこもってしまう。しかしこの「和声理論」の受容が近年急速に高まっているように感じるのは、ジャズやポピュラー領域における「コード理論」の人気と、その汎用性の高さも関係しているかもしれない(正確にはコード=和音であるが、この違いもまた面白い)。

本書の執筆者はみな西洋音楽研究をベースとしているが、西洋の「和声理論」とジャズやポピュラーの「コード理論」は別ものではなく、むしろ連続的につながっている。ただ、その表象の仕方や「記号」が異なるだけなのだ。言葉と同じように、和声理論も時代と地域を反映し、変化していく。根底には、人間の耳から直接的に身体に影響を及ぼす音の響きに対する飽くなき関心がある。古代ギリシャのピュタゴラスによる「協和」の探究から、ラモーやリーマン、シェーンベルクといった重要な理論家を経て20世紀のアメリカまで、その変遷を追ったのが本書である。網羅的ではないため、章の間に挟まれた3つの「コーヒーブレイク」で、理論の変化の背景として重要な観点を抽出した。知の体系としての「科学(学問)」の分類と変化、教育とのかかわり、そしてネイション(またはナショナリズム)の問題である。耳という器官から入った響きは人間の美的感覚を刺激し、頭脳はそれを様々に記号化する。その方法の違いを楽しんでいただけると嬉しい。

(安川智子)

広報委員長:香川檀
広報委員:利根川由奈、白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2019年6月14日 発行