編著/共著

川本直、樫原辰郎(編著)、武田将明、ほか(著)

吉田健一ふたたび

冨山房インターナショナル
2019年2月
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私は吉田健一を特に愛読してきたわけではなかったが、2014年に長谷川郁夫による浩瀚な伝記(新潮社)が出たこともあって、改めて吉田の人と作品に触れてみると、一般に「西欧の『本物の』教養を身につけていた数少ない日本人」といった言い回しで評価され、どこか俗世を離れた印象のあった吉田のイメージが、いい意味で崩壊していくのを感じた。そこで吉田没後40年に当たる2017年に、東大駒場でシンポジウム「吉田健一と文学の未来」を実施した。登壇者は私のほか、英文学者の富士川義之と作家の柴崎友香。本書には、このシンポジウムの様子が収められているだけでなく(なお、武田の講演は大幅に加筆している)、いま吉田健一を読み直す、あるいは読み始めるために大いに役立つ論文・記事が収められている。文芸評論家の川本直と映画監督の樫原辰郎による、吉田の生涯を紹介する愉快な対談に始まり、多彩な活躍を見せた吉田の随筆・批評・小説・翻訳のそれぞれを明晰に論じた文章が並び、その前後に吉田の文章に出てくる土地の紹介や、取り壊される直前の吉田邸を訪問した記録、さらには現在入手可能な吉田の著作のブックガイドが挟まれている。十代から八十代までの幅広い執筆陣十三名による、尋常でない熱量のこもった一冊をぜひ。

武田将明

広報委員長:香川檀
広報委員:利根川由奈、白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2019年6月14日 発行