プレイヤーはどこへ行くのか デジタルゲームへの批評的接近
これまで震災後文学やミステリーなど、同時代的な様々なテーマについて批評を展開してきた批評家集団・限界研。本書はその限界研の様々なバックボーンを持つメンバーによるデジタルゲームに関する評論集である。
現代におけるデジタルゲームは多様に展開されており、一面的には捉え辛い。そのために近年のデジタルゲームについての研究は、多様な視点から凄まじい勢いで進んでいる。限界研では約1年半にわたり毎月勉強会を開催してそれらを踏まえて議論を重ね、本書を刊行するに至った。
本書ではデジタルゲームをプレイするという行為やプレイヤーとの関係から様々なデジタルゲームとその周辺について考察を展開することで、総体としてのデジタルゲームの未来像を考えてみた。その結果、論考は大きく「ゲームとシステム」、「ゲームと身体」、「ゲームと社会」、「ゲームとゲーム」という4つのキーワードに分類できるものとなり、それはそのまま本書の構成となった。
たとえば拙論「パチンコのゲーム性の変遷」ではボタンを押すことやゲーム性の規制という視点から、パチンコの演出の変化を追った。ほかにもデジタルゲームのシステムやボタンを押すことの神経科学的理解、実況というプレイの在り方など、ここでは書ききれないほど扱う対象と考察の視点は多様となった。これらのことと合わせてキーワード集の掲載からも、現在のデジタルゲームの在り方を知りたい者への教科書的な性格も本書は帯びているといえよう。
ゲーム実況とは新たな批評の形であり、これを反映して新たなデジタルゲームが作られることも多々ある。「おわりに」で宮本道人も触れているように、デジタルゲームと人々の新しい関係が、個別作品という垣根を越えた総体としてのデジタルゲームを作り上げていくことに疑いようはない。本書は論考を紡いだことでその在り方を示したと同時に、総体としてのデジタルゲームの一端を担っているのである。
(西貝怜)