編著/共著
老いと踊り
勁草書房
2019年2月
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少子高齢化が進む日本にとって、<老い>は社会変化に伴う古い価値観との軋轢を生む、現実的な対応を求められる問題である。その一方で、<老い>と踊りの研究は強さや効率性を至上命題としない主体の新しい在り方を模索し、欧米中心に成立したダンスの構造に新たなパラダイムを切り開くものである。先行書The Aging Body in Dance(Routledge、2017)を踏まえ、この学術的見地を日本国内での議論に新たに接続し、ほぼ同時期に本書刊行に漕ぎ付けることとなった。
本書では、1960、70年代に伝統的なアプローチを脱構築した振付家であるドイツのピナ・バウシュ、米国ポストモダンダンスのイヴォンヌ・レイナーが語る老いと共に、米国のメレディス・モンク、日本の伝統舞踊での老いの価値を支える身体観や、このテーマを体現する大野一雄の魂の舞踏へと、高揚した議論はドライブしていく。それと同時に、日本の老女神信仰から発した芸術創作や神道の「翁童身体」、老いの構造を用いた上演分析や舞踏の継承が論じられながら、死への移行の問題を含めた普通の人の老いの過程からも舞踊と老いの関係が考察される。研究と実践の場において一線で活躍するこの書籍の論者とともに、<老い>と踊りという切り口で、新たな挑戦を仕掛けたい。
(中島那奈子)