編著/共著
日本を解き放つ
東京大学出版会
2019年1月
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東京大学のUTCP(共生のための国際哲学研究センター)を中心に長年「タッグ」を組んで世界の研究者たちと親密な研究交流を実践してきたわれわれ(小林康夫/中島隆博)が、そのような交流の場でつねに問題となってくる「世界のパースペクティブのなかで日本文化をどう理解するか」という挑戦に、あらためて一冊の本を通して、応えてみようとした本です。もちろん、われわれの友人であるトマス・カスリスの日本文化論に刺激されたところはあって、その刺激的な論にわれわれはどのように応答するか、という「責任」をわれわれ自身の対話をつうじて果そうとしたものと言ってもいいかもしれません。われわれは、日本文化の研究者ではなく、どちらかと言えば、小林は現代フランス哲学+アート・クリティーク、中島は中国哲学研究ですが、もはやこの時代、人文系の学者は自分の狭い専門領域に閉じこもるわけにはいかない。まずは、自分自身のことばを「世界にむかって解き放つ」必要があるわけです。そのためにどのような「問い」を自分に与えるのか、それが問題です。この本は、研究成果を発表するというのではなく、「世界」からの「問い」に応えようと試みる試行的な実践の記録と言っていいと思います。
(小林康夫)