編著/共著
非在の場を拓く 文学が紡ぐ科学の歴史
春風社
2019年2月
複数名による共(編/訳)著の場合、会員の方のお名前にアイコン()を表示しています。人数が多い場合には会員の方のお名前のみ記し、「(ほか)」と示します。ご了承ください。
本書は、人間の想像力が、テクノロジーの発達や科学思想の展開によってどのように変化してきたかをさまざまな時代・地域の観点から捉える試みである。副題にある「文学」とは、文学作品のみを対象とするのではなく、広い意味での人間の想像力と表現行為全体を示す。このため、執筆陣の専門領域は文学、哲学、美術史、思想史、生理心理学など多岐にわたっており、近年人文学において試みられている自然科学との協働のひとつの可能的な展開となっていると言えるだろう。
内容は時代順・主題別に、四部にわけられている。すなわち、啓蒙主義時代の詩と科学(1、2章)、20世紀初頭から戦間期にかけてのテクノロジーと美術・映画の関係(3-5章)、「歴史以後」の時代における表現の可能性(6-8章)、そして人間の意識と無数の可能世界をめぐる思考実験(9、10章)である。個々の論文の委細を紹介することは控えるが、通読してみると、人間の意識や感情、表現の虚構性をめぐる問題が研究対象の時代や文化的差異を超えて共鳴している点が興味深い。
(池野絢子)