翻訳
メシア的時間 歴史の時間と生きられた時間
法政大学出版局
2018年10月
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シェリングからレヴィナスまで、モーゼス・ヘスからローゼンツヴァイクまで、ヘーゲルからデリダまで、ニーチェからプルーストまで、近現代独仏哲学・社会思想・ユダヤ思想を縦横無尽に踏破し、ストラスブールからつねに濃厚で刺激的な議論を展開してきたベンスーサンの主著。類書に見られがちなようにユダヤ系思想家からメシアニズム的な考えをピックアップして整理して満足するのではなく、とりわけ上述の思想家のテクストの緻密な読解に基づいて、「時間」概念の再検討という哲学的な課題のために、直線的時間でも循環的時間でもない、「生きられた時間」それ自体を描きうる「出来事」の時間とも言うべき時間概念を「メシア的時間」として提示する。「世俗化」、「忍耐」、「記憶」、「希望」、「他者」、「倫理」、「正義」、「言語」といったテーマも、「メシア的時間」を考えるための単なる「類題」ではなく、「生きられた時間」を構成する要素となる。訳者にとっては、「メシアニズム」の哲学的含意はもとより、レヴィナスがタルムードやローゼンツヴァイクに倣い述べた「時間とは他者である」「メシアとは私である」というテーゼの連関をはじめて実質的に理解させてくれた書物である。
(渡名喜庸哲)