翻訳
メイド・イン・ソビエト 20世紀ロシアの生活図鑑
水声社
2018年3月
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1991年のソビエト崩壊から四半世紀がたった。崩壊後の経済危機や政情不安を乗り越え、豊かで便利な社会に様変わりしたロシアでは今、ソビエト時代の回顧が静かなブームとなっている。ロシアの書店には『ソビエト・スタイル』や『ソビエト料理』のような、ソビエトをテーマにした本が所狭しと並ぶ。
原著はその先駆けをなした本である。マリーナ・コレヴァ(芸術・文化)、タチヤナ・イヴァシコヴァ(技術史)を中心とする10人の著者が、ソビエト連邦の国旗や宇宙船「スプートニク」などの輝かしい歴史の一部から、街の風景をなしたクワスのタンク車や水の自販機、缶詰やチョコレートまで、61点のものを紹介する。それらがどのように生み出され、生活に浸透していたかを読むにつれ、ソビエトの暮らしの特徴と人間味が伝わってくる。原題『メイド・イン・ソビエト−ソビエト時代のシンボルたち』の通り、この本はシンボルとしてのものを通じて日常生活を歴史化する試みなのだ。
翻訳ではソビエトの同時代を生きた世代から崩壊後に生まれた世代まで幅広い読者に向けて発信する意図から、副題を「20世紀ロシアの生活図鑑」とした。社会主義国家の独自性だけでなく、ソビエトを生きた人々と我々との近しさを伝えられたら幸いである。
(大野斉子)