編著/共著

ハルーン・ファロッキ(監督)、堀潤之(解説・翻訳)、瀧健太郎(解説)

世界のイメージと戦争の刻印/隔てられた戦争 識別+追跡

ビデオアートセンター東京(企画・DVD制作)、現代企画室(発売)
2018年4月
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かつてはシネフィルの間でも「知る人ぞ知る」存在だったドイツの映像作家ハルーン・ファロッキ(1944-2014)は、特に2000年代以降、あちこちの美術館やギャラリーで頻繁に映像インスタレーション作品を見かけるようになってから、現代アートシーンに多少とも関心があれば誰もが名前を知っている存在に躍り出た感がある。とはいえ、長短含めて100本近い作品の作り手であるファロッキが実際にどのような活動をしたのかについては、特に今回初めてDVDがリリースされた日本では、依然としてあまり知られていないのではないか。

ファロッキに関しては、ジョルジュ・ディディ=ユベルマンの『受苦の時間の再モンタージュ』(森元庸介・松井裕美訳、石井朗企画構成、ありな書房)に含まれている高度で稠密な論攷がすぐれた邦訳で読める一方で、彼自身の作品や文章はこれまで限られた機会にしか紹介されてこなかった。結果的にその溝を埋めるものとなった本DVDには、ファロッキの代表作として誰もが挙げるであろうエッセイ映画の金字塔『世界のイメージと戦争の刻印』(1988)と、有名な映像インスタレーション作品《眼/マシーン》シリーズ(2000-2003)とも連動する『隔てられた戦争 識別+追跡』(2003)の2作品が収録されているほか、解説冊子には、ビデオアートセンター東京代表を務めるヴィデオ・アーティストの瀧健太郎氏によるイントロダクションと、堀潤之による2作品の入門的な解説記事、そしてファロッキ自身の絶筆となった「ドキュメンタリー映画について」という文章(堀訳)などが収められている。

なお、この絶筆を読むと分かるように、ファロッキは書くものも大変面白い。彼のテクストは多くの場合、映像作品と連動して書かれており、それといわば一体化しているとも言える。作品の紹介と合わせて、今後、彼の文章もさらに紹介されていくことを期待したい(ちなみに、彼が執筆した文章の一部は、Harun Farocki, Imprint/Writings, ed. Susanne Gaensheimer and Nicolaus Shafthausen, New York: Lukas & Sternberg, 2001に集成されている)。

(堀潤之)

広報委員長:香川檀
広報委員:利根川由奈、増田展大、白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2018年10月16日 発行