編著/共著

川崎弘二、阪本裕文(著)

小杉武久の映像と音楽

engine books
2018年1月
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2017年12月9日から2018年2月12日まで、芦屋市文化博物館にて、小杉武久の展覧会「小杉武久 音楽のピクニック」が開催された。小杉は戦後日本の現代音楽における重要な作曲家・即興演奏家であり、音の自発性を厳格に追求し、演奏行為と音の概念を拡張する活動を半世紀以上にわたって展開してきた人物である。また、小杉は「グループ・音楽」「タージ・マハル旅行団」への参加や、マース・カニングハム舞踊団の音楽監督などの活動でも知られる。本展は、このような小杉の活動を膨大なアーカイヴ資料と多数のオーディオ・ヴィジュアル作品(自発的にサウンドを生成する電子回路によるオブジェ群)によって俯瞰するもので、音楽と美術を架橋する存在であった小杉の動きに関連して、国内における1960年代の前衛芸術運動や、ニューヨークのフルクサス周辺にいた前衛たちの活動も、鮮やかに浮かび上がらせるものとなっていた。

さて、本展では小杉に関わる映画・映像の上映会も開催されたが、本書はこの上映会のために作られた解説冊子にあたる。上映会の構成は下記の通りで、小杉の公式な演奏記録を集めたプログラムと、小杉が音楽を担当するなどした実験映画・ビデオアート、そして記録映画を集めたプログラムが併置された。特に現代美術との交流を示すプログラム2と、実験映画・個人映画とも関連する前衛的な記録映画を集めたプログラム3は、資料価値の極めて高いプログラムだったといえよう。

プログラム1「小杉武久演奏記録」(2018年1月27日)

  • 「朝日ニュース これが音楽だ!」(1961)
  • 「Spectra(video version)」(1992)
  • 「音の世界 新しい夏 芦屋市立美術博物館」(1996)
  • 「二つのコンサート 国立国際美術館」(2009)

プログラム2「現代美術とのかかわり」(2018年1月28日)

  • 城之内元晴「ハイレッド・センター シェルター・プラン」(1964)
  • 城之内元晴「Wols」(1964/70s)
  • 中谷芙二子「卵を立てる」(1974)
  • 池田龍雄「梵天」(1974)
  • 島袋道浩「小杉武久さんと能登の桶滝に行く」(2013)
  • 島袋道浩「小杉武久さんと能登の見附島に行く」(2013)

プログラム3「PR映画・記録映画・科学映画」(2018年2月10日)

  • 松川八洲雄「ある建築空間」(1964)
  • 北村皆雄「神屋原の馬」(1969)
  • 康浩郎「オープン・スペースを求めて」(1970)
  • 杉山正美「脳と潰瘍」(1971)
  • 杉山正美「スキンカラー」(1974)

プログラム4「マース・カニングハム舞踊団」(2018年2月11日)

  • 「スクエアゲーム・ビデオ」(1976)
  • 「ローカル」(1980)
  • 「チェンジング・ステップス」(1989)
  • 「パーク・アベニュー・アーモリー・イベント」(2011)

本書に掲載されているのは川崎弘二と阪本裕文による上記作品の解説と、川崎による論考「小杉武久の映像と音楽」、そして小杉が関わった映画・映像のフィルモグラフィーである。本書の他にも、川崎が主宰するenginebooksからは、小杉の著書である『音楽のピクニック新装版』と、小杉のインストラクション作品を集めた『Instruction Works』が出版されているので、併せて一読を願いたい。

(阪本裕文)

広報委員長:横山太郎
広報委員:柿並良佑、白井史人、利根川由奈、原瑠璃彦、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2018年6月22日 発行