翻訳
難破する精神 世界はなぜ反動化するのか
NTT出版
2017年8月
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本書はいまだに「他者」として留まる「反動」についての論考である。フランス革命のときに、「人類の解放」へと向かう「川の流れ」に抵抗する者が「反動」と呼ばれた。革命が未来に向かって流れる川だとすれば、反動は過去へ逆流する川である。これらは相補的な関係にあり、保守主義と対立する。エドマンド・バークは「流れ」の方向を予測できると思い込むや問題が生じると考えた。
反動とは政治的・歴史的・闘争的ノスタルジアである。過去のある時点に理想の社会を措定し、その崩壊が黙示録的恐怖を生み、文化悲観主義をもたらすとする。この歴史は断絶からなる。例えば、古代のグノーシス主義、宗教改革、マキャヴェッリ、啓蒙思想、フランス革命、世俗化など。過去に立脚するノスタルジアは強力で、右翼にも左翼にも、果ては政治的イスラームにもウェルベックの『服従』にも作用している。カール・シュミットの「政治神学」に魅せられたヤーコプ・タウベスやアラン・バディウも「未来」へのノスタルジアに囚われている。
では、このような反動にマーク・リラは何を処方するのか。聖アウグスティヌスの次の言葉である。「われわれは道を切り開きながら歩んでゆく定めにある。そして後は神の御手の中にある」。
(山本久美子)