編著/共著

大倉 源次郎(語り・文)

生田ケイ子、濱崎加奈子、原瑠璃彦(編)

大倉源次郎の能楽談義

淡交社
2017年9月
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能楽小鼓方・大倉流十六世宗家の大倉源次郎による初の単著。大倉源次郎は、間合い、掛け声、鼓の打ち込みの文字通りの完璧な芸により、現代の能楽界において欠かせない重鎮であるが、一方で大倉師は、類い稀なる話術の持ち主であり、その引き出しは無数にある。これまで様々な場所で数多くの小鼓の体験ワークショップ、講演等を行うなかで、その都度、人々をあれよあれよという間に能楽の壮大な世界に引き込み続けてきた。

が、その「源次郎ワールド」があまりに壮大、かつ、軽快に展開するゆえ、一度耳で聞いただけで汲み尽くすのは容易ではないため、各方面から「ぜひ本に」という話が多々あった。それが、ちょうど還暦を迎えた昨年、ようやく一冊にまとめられたわけである──同時に、氏は重要無形文化財保持者個人指定(通称:人間国宝)となった──

本書には、日本全国、さらには海外各国での囃子方としての活動、そこでの見聞を踏まえた上での、大倉独自の能楽の「読み」が説かれており、その話題は、「翁」という謎の存在、アフリカから日本へと鼓が辿ってきた「ドラムロード」、海外文化と能楽の相互交流、教育としての能楽、各曲に隠されたメッセージの解読など多岐にわたる。

能楽は、閉ざされた世界と思われがちかもしれない。しかし、本書は、能楽の種々の要素がある種の普遍性を持ち、様々な事象に接続可能であることを証している。伝統芸能の分野にとどまらず、幅広い分野の人々にも様々な刺激、もしくは問いかけを与える内容であると確信している。

なお、章の間には磯崎新、坂本龍一をはじめとする各界の著名人から能楽へのメッセージを12個掲載しており、これらも貴重な内容となっている。

(原瑠璃彦)

広報委員長:横山太郎
広報委員:柿並良佑、白井史人、利根川由奈、原瑠璃彦、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2018年2月26日 発行