編著/共著
風刺画とアネクドートが描いたロシア革命
現代書館
2017年10月
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2017年は「ロシア革命100年」ということで、その関係の本がかなり出版された。もっとも、「ロシア革命50年」の出版点数に比べれば格段に少ない。なにしろ、革命を契機に成立したソ連邦がすでに四半世紀前に消滅している。これでは、ロシア革命を振り返ろうとする気運が高まらないのも無理はない。ましてや、若い世代に伝えるにはなおさらに工夫が必要だ。
そうした困難な状況下で登場したのが本書である。「諷刺画収集家」の著者は、主としてロシア革命後10数年間に世界各地で発信されていた諷刺画やマンガ、アネクドートを集め、それらを駆使して、当時の眼差しや声を臨場感豊かに伝えている。これらだけでも時代の雰囲気は十分に感じられるのだが、著者自身が綴る革命小史もまた当時の経過を的確にまとめた「ロシア革命史入門」となっている。
興味深いことに、他の「ロシア革命100年」絡みの本の多くとは異なり、本書の「主人公」はトロツキーである。革命への賛否にかかわらず、1930年頃までの諷刺の世界ではトロツキーが格好の対象になっていたようだ。ちなみに、その後のソ連が辿ろうとしている道をいちはやく具体的に批判したのもトロツキーであった(『裏切られた革命』1936)。
(桑野隆)