編著/共著
異貌のパリ1919-1939 シュルレアリスム、黒人芸術、大衆文化
水声社
2017年7月
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2016年秋に東京日仏会館主催のもと石橋財団の助成金を得て開催された国際シンポジウム「芸術照応の魅惑──両大戦間期のパリ」の記録である。本書刊行にあたりシンポジウム時の構成を組み替え、メディアの問題を扱う「イメージをめぐって」、パリ国際植民地博覧会やプリミティヴィスムの問題に触れる「シュルレアリスムとその外部」、ジャズおよびアフリカなど外部の影響を論じる「黒いパリ」の三つの軸を設けて計21本のテクストを配置しなおしている。本プロジェクトのために海外からミシェル・ポワヴェール、エルザ・アダモヴィッチ、パスカル・ブランシャール、ヤニック・セイテの四名が招かれ国際シンポジウムというに相応しい内容になった。両大戦間のパリを論じる書物は多いが、本書には、パリ植民地博の問題に踏み込むほかに、メディアの問題を前面に立てるなど独自性がある。メアリー・レイノルズやロジェ・パリーの仕事を紹介するなど貴重な貢献も多い。三部構成という仕立ては状況の産物であって、河本論文と柳沢論文はシンポジウム時のように隣り合わせになることでさらにパワーアップするということがあるかもしれない。原稿の厳密な枚数制限の功罪はあるだろうが、読者自身が頭のなかで全体を再編集してみれば、さらに新たな発見につながる可能性が随所に秘められているのではないか。
(千葉文夫)