編著/共著
彫刻の問題
トポフィル
2017年3月
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本書は、彫刻との関わりがとくに深い、爆心地・長崎から、戦後日本の彫刻を再検証するための論集である。
2016年秋、「白川昌生・小田原のどか―彫刻の問題―」展が開催された。本展は、彫刻とモニュメントの根源的性質を問うものであったと同時に、長崎市の原爆落下中心地に建てられたモニュメントおよび彫刻に光を当て、それらの意味を捉え直す試みでもあった。
展覧会の図版に加え、同展企画者の金井直と、出品作家の白川昌生と筆者による論考が収録された本書は、同展において示された問題の射程をよりひらかれたかたちで記録するために企画された。
本書において、白川は広島と長崎の爆心地点に建立されたモニュメントの系譜と彫刻がもつ機能を、筆者は長崎の平和彫刻群にみられるこの国の彫刻制度の限界を、金井はモニュメント史から爆心地・長崎のモニュメントおよび白川と筆者の彫刻作品の特質を論じる。
展覧会企画者、出品作家という立場を超えた三者三様の問題提起を通して、モニュメントに端を発する彫刻という制度の特質と限界、そして21世紀の「彫刻の問題」に立ち向かう理論的視座を探ること、それが本書刊行のねらいである。
(小田原のどか)