編著/共著
現象学のパースペクティブ
晃洋書房
2017年3月
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E.フッサール(1859-1938)が開始した現象学とは、「気づいたときにはすでに成立し(変容し、解体し)ている主体と世界の間に広がる経験の層を解明する」ためのアプローチである。それは、自然科学や他の学問がいまだ特定できていない経験の発見を行うための哲学の技法でもある。
そのフッサールの現象学が、現代思想の潮流の一つとなってすでに100年、フッサールの生誕からは150年が過ぎた。とはいえ今なお、現象学にどのような展開可能な選択肢が残されているのかは定かではない。
そこで本書が試みるのは、現在のフッサール現象学の研究水準を、「現象学的方法」という観点から研究史的に確認すると同時に、「現象学のメタモルフォーゼ」という観点から今まさに現象学が開かれていく様々なフィールドの可能性を模索することである。
そもそも現象学は、新たな経験や体験の開示と記述に力点を置き、そのために活用できる方法や思考の枠は、どのようなものであれ受け入れ、更新し、開発することができ、そうしなければならない「運動の哲学」である。そのモットーにしたがうことで本書は、身体論、他者論、臨床経験、精神分析、魔術、詩作といった固有の経験領域から現象学そのもののパースペクティヴを新しく拓くべく、各著者の論考から組み立てられている。
(稲垣諭)