大テレビドラマ博覧会 テレビの見る夢
本書は、早稲田大学演劇博物館2017年度春季企画展「テレビの見る夢 大テレビドラマ博覧会」と「早稲田大学芸術功労者顕彰記念 山田太一展」の開催に併せて刊行したものだが、単なる図録ではなく、読み物として成立することを目指した。内容は7つのパートからなる。岡室による「極私的テレビドラマ史」は、日本のドラマ史を豊富なスチルとともに主観的に振り返るものだ。テレビというメディアは日常生活と深く結びつき、ドラマの記憶もフレームの外側の個人史と切り離せない。「テレビドラマの現在」では、『あまちゃん』や『トットてれび』の演出で知られるNHKの井上剛氏と、昨年『逃げるは恥だが役に立つ』が大ヒットした脚本家の野木亜紀子氏のインタビュー、宇野常寛氏による宮藤官九郎論を掲載した。「山田太一の仕事」では長谷正人氏による論考を、「今野勉の仕事」では今野氏自身のインタビューと松氏茂氏の論考を、「和田勉の仕事」ではワダエミ氏・和田翼氏のインタビューと故・和田勉氏自身と木原圭翔氏の論考などを、「橋田壽賀子の仕事」でこうたきてつや氏の論考を、それぞれ貴重な資料の数々とともに収録した。また、女優の渡辺美佐子氏には、夫・大山勝美氏と演出家・久世光彦氏について語っていただいた。巻末には年表も付し、テレビドラマのこれまでと現在を一望できる盛り沢山な内容となっている。テレビドラマ史の展覧会自体ほとんど開催されてこなかったし、ドラマの研究や批評は演劇や映画に比して立ち遅れている。本書が、そんな現状に一石を投じるものとなることを願っている。
(岡室美奈子)